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自然浄化法リアクターシステム®の歴史と理論

自然浄化法リアクターシステム®の歴史

自然浄化法は内水護博士によって、1983年に提唱されました。当時博士は、悪臭を伴う高濃度有機物を含む廃水を無希釈で浄化したいと考えていました。 当初、好気性細菌と通性嫌気性細菌(酸素がなくても生育できる細菌)とが共存する活性 汚泥利用を試みましたが思う様な結果に至りませんでした。そこで、自然界の浄化メカニズムに 着眼し、それに近づけるために使用したのが腐植物質と軽石でした。これらを用いることで、通常 の活性汚泥法では得られない効果が発揮され、高濃度の有機物を含む廃水を、悪臭の発生 を抑えつつ無希釈で浄化することに成功しました。 この現象をもとに開発された廃水浄化システムが、自然浄化法リアクターシステム®です。

当時の理論

標準活性汚泥法は、好気性微生物の働きで有機物質分解(ガス化・低分子化)に至る のに対し、自然浄化法は微生物の代謝産物から生じるフェノール化合物類が、重縮合反応 で塊状の産物になると内水博士は考えました[1]。当時は、腐植物質が芳香族化合物(リグ ニンやポリフェノールなど)の重縮合反応で生じると考えられていましたので、この浄化方法で 発現する活性汚泥の良好な沈降性を、この理論と重ね合わせたのだと思われます[2]

最新の情報による理論の修正点

その後、分析技術が進化したこともあり、土壌の腐植物質はそれほど大きな分子でないと考え られる様になりました[3]。実際に生じた活性汚泥を顕微鏡で観察しても、フェノール化合物が 重縮合している形跡はみられません。このことから、この浄化法でも原水に含まれる有機物の 大部分は、活性汚泥法と同様に微生物のエネルギー生産(酸化)や細胞合成(同化) に利用されていると考えられます。良好な沈降性については、現在解明を進めています。

今後の取組み

下水汚泥中に腐植物質が存在することは知られており[4]、自然浄化法における浄化処理でも腐植物質様の化合物が生成しています。 現在に至る分析技術の進化や、そうした技術を駆使した研究により理論の修正が必要であることは明らかですが、自然浄化法は一般的な技術では難しい高濃度有機物を含有した廃水を浄化できる技術であることに変わりありません。最新の研究結果や科学的な解析によって、引続き理論を確かなものにしていきます。

  • 参考文献
  • [1] 特開昭58-219997 有機性物質を含む廃水の生物学的処理方法
  • [2] 特開昭59-160587 有機性物質を含む廃水の生物反応による処理方法
  • [3] 和穎朗太, 陸域最大の炭素・窒素プールを制御する土壌微生物と土壌団粒構造, 土と微生物(Soil Microorganisms), 2016, 70, 3-9.
  • [4] Z. Yang, M. Du, J. Jiang, Reducing capacities and redox potentials of humic substances extracted from sewage sludge, Chemosphere, 2016, 144, 902-908.

自然浄化法リアクターシステム®の実績

これまで全国の廃水処理設備で2000基以上設置されており、厨房排水の処理に用いられる小型のものから、大型のものを複数設置 したものまで様々な施設で利用されています。また、新設に限らず、既設の標準活性汚泥法などの浄化プロセスにも適用できます(※)。 既設浄化設備の水質、悪臭などでお困りの際は、是非ご相談ください。
(※)サンプルを頂戴して、評価検討の上、ご提案させていただきます。

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