技術紹介 TECHNOLOGY

油分離技術

油分の分離

微生物による水の浄化では、原水の油分を予め除去する必要があります。液として浮遊する場合はオイルトラップ、固形の場合は凝集剤などを用いて加圧浮上させて固形分を分離します。

脱水助剤を用いた油分離

原水の仕様が変わり固形油分が発生して困っているが大幅な設備改造ができない、といった事例で威力を発揮するのが、脱水助剤リセルバーを用いた油分離技術です。分離後の助剤と排水分離のために脱水機は必要ですが、加圧浮上設備に較べてコンパクトであり、投資コストも抑えられます。

実施例

宮古島市の下水道排水はn-Hexの値が高く、市の処理施設を運営する上で課題となっておりました。そこで、処理施設の前段で脱水助剤リセルバーを用いた油分離を試みるべく実証試験を行いました。その動画をご覧ください。

し尿処理実証試験:2022年7月27日、28日、アルファ―産業様工場内

実証結果

検 体 名 油分n-Hx
(mg/ℓ)
BOD
(mg/ℓ)
SS
(mg/ℓ)
COD Mn
(mg/ℓ)
全窒素 T-N
(mg/ℓ)
pH
分析方法 S49環告64号
付表4
JIS K 0102 21
及び32.3
S49環告59号
付表9
JIS K 0102 17 JIS K 0102 17 JIS K 0102 12.1
夏場の施設投入原水
(脱水前の水)
1,500 9,000 5,700 4,600 590 4.6
試験No.6ー1 脱離液(脱水後の水)
リセルバー 0.1%添加
凝集剤3.8%添加
5 3,700 30 670 180 4.9(※)
除去率 99.7% 58.9% 99.5% 85.4% 69.5%
  • ※採取時は中性ですが、分析までの時間経過で残留油分が酸化しました。

目的とするn-Hexは、海洋放流許容値30mg/l以下まで分離できました。また、SSも海洋放流許容値40mg/l以下でした。 BOD,COD Mn、全窒素 T-Nも減少が見られます。このシステムを導入することで、後段の排水処理設備の負荷を下げられる ことが実証されました。

実証のフロー

事業化の評価、及び廃棄物について

【ランニングコスト】

実証結果より、宮古島市の処理水量(70m3/日)でのランニングコストを評価しました(単価は参考値)。

項目 実証結果 実装時 単価 実装時ランニング費
脱水助剤リセルバー投入量 1,000g/m3 70kg/日 250円/kg 17,500円/日
凝集剤投入量 273g/m3 19.1kg/日 1,000円/kg 19,135円/日
合計 36,635円/日

廃棄物(脱水ケーキ)の処理費用を評価しました(単価は参考値)。

項目 実証結果 実装時 単価 実装時ランニング費
脱水ケーキ量 発生量 2.2m3/日 15,000円/m3 33,071円/日
含水率 61.9%

【概算の設備費】

処理水量(70m3/日)で、リセルバーによる油分離に関わる装置の概算費用です(工事費含まない参考値)。

本体・付属品概算  脱水機(接液部材質:SUS304) 34.5百万円
  • ※ 凝集剤等の投入装置は別途必要です

【加圧浮上による油分離の場合】

加圧浮上による油分離プロセスでのランニングコストは以下の通りです(単価は参考値)。

項目 実証結果 実装時 単価 実装時ランニング費
無機凝集剤投入量(加圧浮上) 2,500g/m3 175kg/日 80円/kg 14,000円/日
高分子凝集剤投入量(加圧浮上) 235g/m3 16.4kg/日 1,000円/kg 16,422円/日
高分子凝集剤投入量(脱水) 353g/m3 24.7kg/日 1,000円/kg 24,697円/日
合計 55,119円/日
  • ※ フロスを固めるには、脱水時にも凝集剤が必要です

廃棄物(脱水ケーキ)の処理費用を評価しました(単価は参考値)。

項目 実証結果 実装時 単価 実装時ランニング費
脱水ケーキ量 発生量 8.1m3/日 15,000円/m3 121,065円/日
含水率 88%

処理水量(70m3/日)で、加圧浮上による油分離に関わる装置の概算費用です(工事費含まない参考値)。

本体・付属品概算  加圧浮上装置 32.0百万円
 遠心分離機(接液部材質:SUS304) 34.0百万円
合計 66.0百万円
  • ※ 凝集剤等の投入装置は別途必要です

比較検討の結果、リセルバーによる油分離プロセスを導入した場合、一般に用いられる加圧浮上+遠心分離プロセスに対し ランニングコスト、初期投資共に削減できると言えます。主要装置が脱水機のみなので、設置場所も削減できます。

自然浄化法に関するメカニズム解説はこちら

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